#箱の中

しあわせになるために生きてます。とりあえず来年は海外に旅に出ます。

「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」の解説&考察。これはわたしにとっての青春小説。

何度読んでもまた読みたくなる本。

わたしには人生に影響を受けた本、苦しいときに救われた本など特別な本がたくさんあるのですが、その中の一冊が桜庭一樹の「砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない」です。

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この本を読むとなんだか懐かしい気持ちになるんですよね。「わかるわかる〜自分も昔そんなこと思ってたわあ」となって、読んだあとはなぜか、よし、明日も人生がんばろ.と思えます。

 

なので気分がハァ…マジ病みファンタスティックドリーム…となってるときに読むと、ちょっと元気になれるのでおすすめです!

そんな「砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない」について、わたしなりの感想&考察です。

 

大まかなあらすじ

クラスの中で自分が1番不幸だと密かに思っていて、のんきに生きてるクラスメイトたちを心の中で小馬鹿にしながら、早く大人になりたいと望む現実主義者な中学生、山田なぎさ。

そんな彼女のクラスに、嘘をつくことでしか生きられない美少女、海野藻屑が転校してくる。 

なぜか自分につきまってくる彼女を疎ましく思いながらも、次第に仲良くなっていくふたり。

少女たちが行き着く先とは?

 

海野藻屑が嘘つきな理由。

藻屑はいつも足を引きずっているんですけど、その理由を彼女は「ぼくは人魚だから」と言うんですよ(ほんとは父親に幼少期から酷い虐待を受けているせいで脚に障害がある)

大好きな父親を守るために、虐待されていることを隠すために彼女は嘘をついているのでしょうか?

うーん、それは違う気がする。たしかにそれもあるだろうけど、彼女は嘘をつくことで自分を守っているんじゃないのかな、とわたしは思う。

自分の嘘を誰よりも信じたいのは他でもない彼女自身で、自分を保つため守るため、つらい現実から目をそらすために彼女は息を吐くように嘘をつく。

藻屑が周りからみれば、なんの意味もない砂糖菓子の弾丸(妄想や虚言癖)を撃ちまくっているのはそういう理由からなのだ。

 

クラスメイトたちはそのことに気づかないんだけれど、なぎさは途中で気づくんですよね。

現実主義者ななぎさからすると、藻屑は嘘つきで妄想虚言癖やろうな非現実主義者。

だから最初はムカつくし、空想家で嘘つきな藻屑を疎ましく、時には苛立ったりもする。だけど藻屑が砂糖菓子の弾丸を撃つほんとの意味に気づいたときそれが彼女なりの必死の抵抗だと知ったとき、なぎさは藻屑を拒絶することを諦め受け入れます。

あたしは藻屑にはまっていた。
かわいそうで、苛立たしくて、きれいで、汚くて・・・。 あたしは両手で顔を覆ったまま、洗濯機に頭を突っ込んで、声を殺して泣いた。藻屑。藻屑。

 

正反対なようで似ている二人。

 あたしは親の元でみんなより一歩も二歩も早く大人になったふりをして、家事をして兄の保護者になって心の中でだけもうダメだよ、と弱音を吐いている。

全てを諦めて現実主義者になることで、辛くて残酷でだけど変えられない現実を乗り越えようとしたなぎさと、全てから目を逸らし自分を嘘で塗り固め妄想の中で生きようとした藻屑。

ふたりは正反対なようで、ほんとうはよく似ています。藻屑がなぎさにつきまとう意味がなんとなく分かる気がする。

もうずっと、藻屑は砂糖菓子の弾丸を、あたしは実弾を、心許ない、威力の少ない銃に詰めてぽこぽこ撃ち続けているけれど、まったくなんにも倒せそうにない。子供はみんな兵士で、この世は生き残りゲームで。

 

大人になる前の少女たちの物語。

結局、現実から目を逸らし続けた藻屑は、ほんとにこの世からいなくなってしまいます。

「あぁ、海野。生き抜けば大人になれたのに…だけどなぁ、海野。お前には生き抜く気、あったのかよ…?」

ラストの担任教師の言葉が印象的。

わたしも藻屑はあまり生きよう思っていなかった気がします。というか最初から死ぬつもりだったような気さえします。だってお父さんにいつか殺されることは分かっていたはずなのに彼女は逃げるようともせず、ただ、そのときを待っていたわけですから。

 

なぎさが「ふたりで一緒に逃げよう」と言ったとき、どんな気持ちだったのかなと想像するとちょっと泣きそうになります。

その瞬間だけでもいいから「生きたい」と思っていたと信じたいですね。

藻屑は玄関に入ると、こちらを振り返って小さく手を振った。にこっと無邪気な笑みを見せた。本当に楽しそうな、嬉しそうな微笑で、あたしは海野藻屑がにやにや笑いとかじゃなくてほんとに笑ってるのを見るのはこれが初めてだと気づいた。

でも結局、大好きななぎさの手をとることはなく、彼女はいってしまいます。


やっぱり親への愛って何物にも変えがたいくらい絶大なんだよなあ、と思わされました。

好きって、絶望だよね。

特に十三歳の少女には、どんなに歪んでても辛くても、それを捨てて生きることはできないんですよね。

 

 あたしたちは13歳で、あたしたちは未成年で、あたしたちは義務教育を受けてる中学生。あたしたちはまだ、自分で運命を切り開く力はなかった。親の庇護の元で育たなければならないし、子供は親を選べないのだ。 

 

バッドエンドなハッピーエンド 

大人になれなかった藻屑は海に帰っていってしまいました。だけどなぎさは藻屑の死を乗り越え、ちゃんと大人になっていきます。

 あたしは、暴力も喪失も痛みもなにもなかったふりをしてつらっとしてある日大人になるだろう。

 

もう二度と、残酷で、甘ったるくて、絶望に溢れていた無力な少女だったあの頃は戻ってこないけれど。 

もし、ふと思い出したり、あの頃を懐かしんでみたくなったたときには、ぜひ「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」を読んでみてくださいね!